セルフレクチャーの効果

セルフレクチャーとは何か

 最近「セルフレクチャー」という言葉が話題となっています。直訳すれば「自分に対する講義」、つまり自分で自分に説明する勉強法です。例えば、数学の問題を解いたあとに、「この問題は何を求める問題だったのか」「なぜこの公式を使ったのか」「別の解き方はあるのか」といったことを、自分に向かって説明してみるのです。成績の良い生徒ほど、このような「自分に説明する習慣」を自然に行っています。
 一般的に、何か新しいことを学習する際、学んだ内容を他人に教えることで知識が定着したり、理解が深まったりするといわれます。相手がいない場合は自分自身に対して説明しても同じ効果が得られると考えられています。これは感覚的な話ではなく、科学的な根拠も伴っています。アメリカのワシントン大学の研究では、学生を2グループに分けて、一方には「学んだ内容をテストで使う」と伝え、もう一方には「学んだ内容をあとで他人に教える」と伝えたところ、教えるつもりで学んだ学生の方が記憶の定着率が高かったという結果が出ました。
 このように、説明を前提とする学習は、単なる暗記よりも脳に深く定着しやすいのです。

セルフレクチャーが勉強に効果的である理由

 学習内容を他人に説明するためには、以下の3つの過程が必要です。

①理解:まずは正確に内容を把握する必要がある
 自分で説明することで、理解不足の箇所に気づけます。説明していて「ええっと……」となってしまうのは、そこがわかっていないからです。もう一度教科書などを見直して、すらすら説明できるようにすると、理解が深まります。

②整理:他人に伝わる形に情報を構造化する必要がある
 物事を論理的に考えられるようになります。セルフレクチャーでは、「何となくこうなる」ではなく、「これはこういう理由でこうなる」と言葉でていねいに説明しなくてはならないからです。

③言語化:自分の言葉で説明できるように準備する必要がある
 説明をするときは、自分のことばで説明することが大切です。教科書や参考書の説明をそのまま言うのではなく、自分の言葉で言い換えてみることで、理解が深まります。また、自分の言葉で説明することで、何を理解していて何が理解できていないのかを知ることができます。

 人に教えるためには、相手が理解しやすいように噛み砕いて説明する必要があります。相手の理解力に合わせた語彙力が重要となるため、沢山の言葉を使い分ける力が鍛えられます。言語化する力は、国語の記述問題や算数・数学の途中式を書く問題などでも必要とされるとても重要な能力です。また、相手がどこでつまずいているのかを理解するためには、読解力や相手の立場に立って考える力も必要です。
 これらのプロセスは、脳にとって非常に負荷が高く、深い学習につながります。つまり、「教えるつもり」で学ぶことは、自然と質の高い学習につながるのです。

普段の勉強に取り入れてみよう

 セルフレクチャーのよいところは、特別な準備がいらないことです。普段の勉強の中に、ほんの少し「自分に説明する時間」を加えるだけで実践できます。時間にしてみれば、せいぜい30秒から1分ほどです。それでも、ただ解いて終わりにするよりも、「どうしてそうなるのか」を一度言葉にするだけで、知識はぐっと定着しやすくなります。
 また、ノートの最後に「今日のまとめ」を一言書くのもよい方法です。「2次関数の最大値は平方完成で考える」「関係代名詞の主格と目的格の違いがポイント」など、自分の言葉で書くという作業そのものが、小さなセルフレクチャーになっています。
 さらに、机に向かっていない時間でもセルフレクチャーはできます。帰り道や寝る前に、「今日勉強したことを誰かに説明するとしたらどう話すか」と考えてみるのです。頭の中で説明するだけでも、学んだ内容を整理するよい機会になります。
 勉強というと、長い時間机に向かうことが大切だと思われがちですが、学んだことを自分の言葉で整理する時間も同じくらい重要です。セルフレクチャーを毎日の勉強の中でほんの少しだけ意識してみると、学び方そのものが変わってくるかもしれません。